2010年02月14日

「対話する力」〜ファシリテーター23の問い〜

表題の書籍を読んでみた。
著者は中野民夫さん、堀公俊さんで日本経済新聞出版社。

読もうと思ったきっかけは、中田さんが講座でよく紹介しているから。
が、最初に読んだ感想は「ありきたりな事を書いているな」というものだった。

タイトル通り「23の問い」について堀さんと中野さんがそれぞれの考えを述べつつ
キャッチボールをしているのだが、「まぁそれはそうだな」と思うようなことばかりで、
特に新しい発見を見出すことはできなかった。

そこで読み方を変えてみた。
新しい知見を得ることを目的にするのではなく、
書かれていることを元に自分の経験と照らし合わせてみることにした。
すると実はなかなか興味深い本であることにようやく気付くことができた。

一例を紹介する。

p80に中野民夫さんが社会活動家のジョアンナ・メイシーさんから教わったことで
「自分の体験から始める」ということを紹介している。

「一般的な抽象論から始めるのではなく、(中略)参加者一人ひとりの体験を思い出して語るところから始めて行くものです。皆が実感を持って話し始めることができ、お互いに触発されて、テーマの多面的な解釈や取り組みが可能になります。」とある。

これは中田さんが再三言われている「事実」「自分の経験」ということに大きく関連していると思うが、
自分の体験で言えば水俣時代のことが思いだされる。

当時働いていたNGOでは宿泊施設を持っており、水俣に興味関心のある人を受け入れていたが、
一つルールがあった。それは宿泊した次の日に職員の朝ミーティングに参加し、
自己紹介を行うというもの。もちろん職員側も自己紹介を行う。
NGOなので金銭のやりとりだけでなく、
出会いの場にしたかったという思いから始まったらしい。

自己紹介では名前、出身地などを話してもらった後に、「水俣に来る動機」を話してもらう。
これがなかなか面白い。
そこに居る人間が共通して持っている「今水俣にいる」という事実の背景をそれぞれが語ることで、
中野の言う「皆が実感を持って」「お互いに触発されて」「テーマの多面的な解釈や取り組みが可能」になる。
その結果として何年も一緒に働いている職員の聞いたこともないような思いを聞くことがよくある。

中野が指摘しているように
「初めの問いは良いとか悪いとか人に裁かれるも心配がないものが適切(中略)自分の体験はその人その人の事実であり、真実であって、他人が良いとか悪いとかいうものではない」ところからはじめることで良い効果を生んでいるように思う。

実際水俣は依然として「敷居が高い」「プレッシャーを感じる」という
イメージを持ってくる人が多く、一部ではそれは確かにある。
そういう緊張感を持った人が上記のようなやりとりでリラックスでき、
水俣病という軽くはないテーマについて自由に意見を出せるようになることがある。

「対話する力」はそれぞれのテーマについてはさらっとしか記述されていないので、
ただ読むだけでは浅くなってしまう。
しかし、自己の経験を振り返るためのツールとしてはとても興味深い。

中田さんが書籍を紹介する時の言葉を思い出した。
「ファシリテーションについての良い本です。
ただできる人は知っていることも多いだろうし、
できない人が読んでもできるようにはならない。
いくら泳ぎ方を本で勉強しても水の中で練習できなければできないのと一緒」

最初は「そんなことはないだろう」と思っていたが、
ようやくその意味がわかったような気がした。

なんだかだらだらと長くなってしまいました。反省。
最後までお付き合い下さった方、ありがとうございました。
posted by taku at 00:16| Comment(0) | 丁稚、考える。。。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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